句点はどこに打ちますか?(その3)

◆句点(。)はどこに打つ?

さてさて、前置きが長くなりましたが、ようやく今回のテーマである「句点(。)はどこに打つ?」にたどり着きました。第1回の質問をもう一度見てみたいと思います。

問1
文末にカッコ書きがある文章の場合、句点(。)はどこに打ちますか?
  • <パターン1>句点はこのように打ちます(カッコ内はこのようになります)。
  • <パターン2>句点はこのように打ちます(カッコ内はこのようになります。)。
  • <パターン3>句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになります)
  • <パターン4>句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになります。)

ここで、例として<パターン3>を選んだケースを考えてみましょう。文書標準には、以下のようなルールを記載することになります。

<パターン3>を採用した句点の打ち方についての文書標準例
  • 3-(1):文末には句点を打つ。
  • 3-(2):文末にカッコ書きがある文章の場合、カッコ書きの前に句点を打つ。
  • 3-(3):カッコ書きの中には句点は打たない。

【質問1】
カッコの中に複数の文章を書くときは、どう書けばいいの?

文書標準をメンバーに示してからしばらくすると、メンバーからPMOに対して上記のような質問が出てきました。
例としては、「カッコ内はこのようになります」の文章に続けて、「カッコ内の読点(、)については別途お知らせします」という文章が続くような場合です。

そこでPMOは試しに以下のように書いてみます。

  • <パターン3-1>
    句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになりますカッコ内の読点については別途お知らせします)

何か変です。「3-(3):カッコ書きの中には句点は打たない。」のルールにより、カッコ内の文章の切れ目がはっきりしないので、大変読みづらくなってしまいます。

そこでPMOは以下のように書くよう、ルールを変更します。

<パターン3>を採用した句点の打ち方についての文書標準例(※質問1に対応したルールの変更)
  • 3-2-(1):文末には句点を打つ。
  • 3-2-(2):文末にカッコ書きがある文章の場合、カッコ書きの前に句点を打つ。
  • 3-2-(3):カッコ書きの中には句点は打たない。ただし、カッコ書きの中に複数の文章がある場合は、最後の文章以外には、文末に句点を打つ。

変更後のルールに従って、カッコ内の文章でも、最後の文章以外には文末に句点を打ってみました。

  • <パターン3-2>
    句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになります。カッコ内の読点については別途お知らせします)

【質問2】
文末にカッコ書きがある文章のすぐ後に別の文章を書くときは、どう書けばいいの?

改訂後の文書標準をメンバーに示してからしばらくすると、メンバーからPMOに対して、さらに上記の質問が出てきました。
そこでPMOは試しに以下のように書いてみます。

  • <パターン3-3>
    句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになります)読点については別途お知らせします。

これも何か変です。「3-2-(2):文末にカッコ書きがある文章の場合、カッコ書きの前に句点を打つ。」のルールにより、本来、「(カッコ内はこのようになります)」の部分は、カッコの前の部分である「句点はこのように打ちます。」という文章を補足していたはずなのに、これでは後ろに続く文章にくっついてしまうので、「読点については別途お知らせします。」を補足しているように見えてしまいます。
そこでPMOは以下のように書くよう、ルールを変更します。

<パターン3>を採用した句点の打ち方についての文書標準例(※質問2に対応したルールの変更)
  • 3-4-(1):文末には句点を打つ。
  • 3-4-(2):文末にカッコ書きがある文章の場合、カッコ書きの前に句点を打つ。なお、すぐ後に別の文章が続く場合には、カッコの後ろに空白を1文字入れる。
  • 3-4-(3):カッコ書きの中には句点は打たない。ただし、カッコ書きの中に複数の文章がある場合は、最後の文章以外には、文末に句点を打つ。

変更後のルールに従って、カッコの後ろに空白(背景色黄色部分)を1文字分入れてみました。

  • <パターン3-4>
    句点はこのように打ちます。(カッコ内はこのようになります) 読点については別途お知らせします。

いかがでしょうか。なんだかルールが煩雑になってきました。もしあなたがメンバーなら、こんなルールに従うことがだんだん面倒くさくなってきませんか?第1回でお話ししたような「残念な文書標準」への道にまっしぐらです。

そう、<パターン3>は不合理で、このような書き方を文書標準に採用してはいけなかったのです!

他のパターンを採用した場合はどうだったのでしょうか?

各パターンにおける質問の対応を比較してみましょう。

パターン1質問1がうまく解決できません。
パターン2質問1、2も解決できそうです。
パターン4質問2がうまく解決できません。

<パターン2>が良さそうな感じです。メンバーは質問1や質問2の疑問を持たないはずです。カッコ内に複数の文章を書くケースでも、文末にカッコ書きがある文章のすぐ後に別の文章を続ける場合にも、メンバーは特に迷うことがなく、元々打ってあった句点の後ろに、自然に次の文章を続けることができそうです。

<パターン2>を採用した句点の打ち方についての文書標準例
  • 2-(1):文末には句点を打つ。
  • 2-(2):文末にカッコ書きがある文章の場合、カッコの後ろに句点を打つ。
  • 2-(3):カッコ書きの中の文章にも文末には句点を打つ。

ルールに従って、文章を作成してみました。確かに、質問について解決できています。

  • <パターン2>
    句点はこのように打ちます(カッコ内はこのようになります。)。 読点については別途お知らせします。

第1回で、「読み手も書き手も文書の「内容」に集中できるように」することが文書標準の「目的」だと書きました。<パターン2>は目的に適っています。

結論としては、<パターン2>を採用するのが最も合理的だったのです!

公用文の例

実際の公用文の例を確認してみましょう。

国土交通省告示・通達データベースシステム
http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/index.html
国土交通省
入札金額の内訳の提出について(文書番号:国地契第四三号,国官技第二六五号,国営計第一六一号、平成13年12月4日)
2 工事費内訳書の内容及び様式
1) 数量総括表に掲げる費目及び各工種に対応するものの金額を少なくとも表示したもの(様式自由。ただし、商号又は名称並びに住所及び工事名を記載するとともに、押印すること。)。
国税庁
ホーム>税について調べる>パンフレット・手引き>パンフレット「暮らしの税情報」(平成27年度版)>申告と納税
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/06_1.htm
還付金の受取方法
<預貯金口座への振込み>
 確定申告書に、振込先の金融機関名、預貯金の種別、口座番号を正確に記載してください(ご本人名義の口座に限ります。)。
地上デジタルテレビジョン等設備整備事業の実施について
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe2.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=SEARCH&SMODE=NORMAL&KEYWORD=%88%e3%90%ad%94%ad%91%e60610007%8d%86&EFSNO=1156&FILE=FIRST&POS=0&HITSU=1
(平成21年6月10日)
(医政発第0610007号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)
2 事業の実施主体
この事業の実施主体は、地上デジタル放送に対応をしていない災害拠点病院、救命救急センター及び二次救急医療機関の開設者とする(ただし、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)。

おわかりでしょうか。ただし、前回書いたとおり「明文化された公用文ルールはない」ので、完全に徹底されているわけではありません。異なる書き方の例もあります。

消費者庁 消費者ホットライン
http://www.caa.go.jp/region/shohisha_hotline.html
全国には、消費生活センターが763か所(平成26年4月1日時点)あり、そのほか、ほとんどの市区町村に消費生活相談窓口が設置されています。消費者ホットラインは、全国共通の電話番号で、地方公共団体が設置している身近な消費生活相談窓口を御案内いたします。(平成22年1月12日(火)から全国で実施しています。)

しかし、「帰納法としてのルールがある」と書いたとおり、<パターン2>の書き方が圧倒的に多いのです。 実は、筆者は官公庁プロジェクトに関わるようになった最初のころ、文末にカッコをはさんで句点が隣接する「。)。」のような句点の打ち方に大変違和感を覚えました。しかし慣れてくるにつれて、この書き方が最も合理的であり、民間プロジェクトでも積極的に文書標準として採用すべきではないかと考えるようになりました。

次回以降も、公用文の実例をヒントに、文書標準として参考にすべきアイデアについて考えていきたいと思います。


なお、このブログの文章そのものは、公用文ルールには必ずしも従っていません。公用文ルールをそのまま適用すると、堅苦しくなりすぎる場合があるからです。次回以降も、どうか気軽に読んでいただきたいと思います。単なる話のネタとしていただいても結構ですし、また実際に文書標準を検討するときの参考にしていただけたら大変うれしいです。


会社ホームページでは、HYBRIDE(ハイブライド)がソリューション提供する「データ分析」「業務改善」「プロジェクト推進」を紹介しております。
HYBRIDE(ハイブライド)の公式Facebookページ